一官僚が天皇の威光をタテにしてものを言う。こんなあぶない話はない。
小沢一郎が新聞記者にむかって言ったことが正論だっただろう。
天皇会見の直前になって内閣を批判して、社会的にも政治的にも外交的にも問題を大きくしておきながら、長官の職に居すわる人物が正当なわけがないだろう。国益もクソもない。国家公務員としての自覚もない。天皇陛下をダシにして宮内庁の「庁益」を守るためだけの小役人。小沢でなくても批判するのは当然だ。
"1ヶ月ルール"を守ることを"政治的中立"を守ることにすり替えて、1ヶ月を切ったから政治的中立が脅かされた、という。こんなのは、ためにする屁理屈と言うべきでしょ。会見の日程調整が絶対不可能だったならそういう主張もあるだろうが、現実には調整は可能だった。ほかに副主席より優先すべき予定があったというなら、話は分かる。そんなものはなかった。2日3日前に突然割り込んだわけでもない。ぜんぶ事務的に柔軟に対処すればいい話だった。
それを、あえて会見直前のタイミングで政治問題化させたという意味で、羽毛田氏の意図ははっきりしている。露骨に、ある政治的効果をねらった行動だったと見なすのが普通だろう。鳩山政権へのゆさぶり、民主党の外交政策への干渉。
天皇と日米同盟、この不可触領域をめぐる暗闘
西松事件は総選挙が目前の旧政権下3月に起きた。そして継続中にある。
宮内庁事件は新政権が発足後の12月に起きた。そして継続中だ。
つぎに起きるのは外務省か防衛省がからむ事件だろう。
これは、ニッポンの官僚機構と新政権との命がけの暗闘。そう見るとなかなか面白い。
検事総長:樋渡利秋:任期2008年7月1日〜
宮内庁長官:羽毛田信吾:任期2005年4月1日〜
駐米大使:藤崎一郎:任期2008年4月1日〜
この人たちは、国家公務員の中でも特別の地位にある。「認証官」。内閣総理大臣が任命して、天皇が認証する、官僚の最高峰だ。霞ヶ関の各省庁トップは事務次官だが、事務次官級では「天皇に認証」されない。格が違うのだ。宮内庁長官だけでなく検事総長も大使も天皇の名の下にえらばれた人たちだ。明治以来のニッポンの官僚機構、その頂点は、それだけの権威をもっている。
現在の認証官は、大臣などをのぞいてほとんどすべてが旧政権によって任命された面々ということになる。自民党の息がかかった顔ぶれになりがちなのは当然として、戦後ニッポンの55年体制と日米同盟のなかで地位を獲得した人たちなのだ。いわば、裕仁天皇とマッカーサーが並んだ有名な写真に象徴される、日米関係と天皇制が、彼ら認証官の身体を流れている血だということになる。宮内庁と外務省との歴史的な結びつきは、その意味で非常につよい。濃い血で結ばれている。天皇・習副主席会見事件の背景に見えかくれするのもこれだ。
彼らの内のふたり、検事総長と宮内庁長官とが今年、民主党・小沢一郎をつぶしにかかった。当たるも八卦当たらぬも八卦にすぎないが、外務省=アメリカ・ルートの線上から第3のスキャンダルが仕掛けられそうな気がする。防衛省もからむかもしれない。さらに面白いことになるのではないか。日米関係と天皇制という、不可触領域を舞台にした、まさしく「最後の聖戦」になるか。
マスコミの正義と狂気
ところで、天皇会見事件では、最初から小沢を犯人・首謀者に仕立て上げようというストーリーで、マスメディアは動いた。たんに小沢が嫌いというだけの理由しか、そこには感じられないだろう。ヤクザが因縁をつけるのと同じ。それもよりによって天皇をネタにしての小沢たたき、というあさましさだ。電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも、みんな小沢が悪いのよ、と新聞は書き続けている。
こういうニッポンのマスコミの異常さは、いったいどこから来るのだろうか。この、世界でいちばんの傲慢で無責任な「権力」は何に支えられているのか。「世論」の名をかたって政治家を失脚させるキャンペーンをはることだって平気。公開の場でリンチを加えて無実の人間を破滅させることだって平気。容疑者というだけの人間を極悪人に仕立て上げて、社会的に抹殺するのも平気。
最近の例では、警察・検察権力によって17年間の刑務所暮らしをさせられた菅家氏の一件。逮捕当時の新聞報道をふりかえっているのが『足利事件当時の新聞報道』。それから、だいぶ前にも書いたが、数年前の鳥インフルで京都の養鶏農家・老夫婦を首つり自殺に追い込んだのも、Y新聞ら「ペンの力を使った恫喝」ではなかったか。『鳥インフルエンザと新聞記者』。
新聞は訂正も、反省も、謝罪もしない。ファッシズムのお先棒をかつぐのは、間違いなく彼らマスメディアだ。
この人たちは、「なんちゃってゴジラと日米同盟」の文章の最後のほうに出てくる人たちと同一人種だ。アメリカの威を借りて連立政権を脅すは、天皇の名をかたって連立政権を脅すは・・・。花岡某にいたっては、こんな文章で原稿料もらっているのかね。ゼニがもらえるような中身のある評論を書いたの見たことがないなあ、この人。
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今年も暮れが近づいた。まあ、この手の、おそまつなマスコミ状況を見せつける話題の多かった一年だったこと。やたら正義を振りかざす、カラスがぎゃーぎゃー群れて騒ぐように、マスコミは今年一年、騒ぎまくった。唖然呆然。思考停止。官僚依存。小沢たたき、テポドン迎撃、豚インフル、公然わいせつ・・・
来年こそ、大新聞、民放マスメディアの55年体制、中央集権体制、護送船団体制が根底からぶっ壊れてほしいと、切に願う年の瀬であることよ。
この続きは
■ 「最後の聖戦」〜マスメディア編(2010年1月15日)
■ なぜ検察は小沢に惨敗したか・・情報の制空権をにぎる者(2010年1月18日)