裸の文明 ・・・ [2010/1/8]
去年の夏、ひとときの話題をさらったのが SMAP の草��くんだった。深夜の公園すっぽんぽん騒動。
毎年、寒の候になると、日本全国いろんなところで裸祭りがある。
冷たい海に飛び込んで身を清める。
年末年始、神社や寺の境内に男たちが褌（ふんどし）ひとつの裸で乗り込む。
男たちの身体から湯気が立ち上る。
キリスト教の教会やイスラム教のモスクに素っ裸でつっこんでいく、なんてことがあり得るのだろうか。たぶん無い。神聖な場所に裸とは何事か！。神の怒りにふれて地獄へ落とされるかもしれない。裸で騒ぐのは、ニッポンのかなり特殊な伝統文化だろう。
『逝きし世の面影』を読むと、明治の初め頃まで、ニッポンの男も女も裸があたりまえだったらしい。外国人がやってくると、銭湯に入っていた男も女も、そんまんま通りに出てきた、外人見物に夢中になった、という話がいっぱい記録されている。家の庭先で若い娘が行水する風景もめずらしくなかった。
それに、もちろん風呂（銭湯も温泉も）は混浴だったから、明治政府がこれを抑え込む愚挙？、文化抑圧政策に出るしかなかった。混浴文明は新政府の弾圧にいつまでも抵抗した。山里に逃げ隠れた。これも、むかしのこの国が裸におおらかで寛容だったことのしるしでもあっただろう。
裸の伝統。と言っても、裸祭りは男の祭りだ。さすがに腰巻き一枚、オッパイ丸出しで女が大騒ぎする伝統文化は、無い。いや、昔はあったかもしれない。ストリップの原点が、天の岩戸の前でおどったアメノウズメノ尊にあるという話もあるくらいだ。岩戸にお隠れになったアマテラスをひきだそうと神々がどんちゃん騒ぎをくりひろげた。「アメノウズメ」Wikipedia
民衆には裸への抵抗感があまりなかった。たしかに、温帯モンスーン、夏の蒸し暑いニッポンで、基本的に裸で暮らすというのは、清潔であり、快適であり、もっとも合理的だっただろう。ふんどし一丁、究極のエコなのだ。ステテコひとつで表を歩く。それは今でも同じはずだが、今のニッポンでは、せいぜいクールビズとかいう下らない方法しかない。なにしろ夏でもネクタイの「文明国」だからね。
よくいわれる話に、西洋の女はキャーっと叫んでいちばん最初に胸をかくす。ニポンの女は股間をかくす。というのがある。もともとニッポン人は、オッパイを人目にさらすことに抵抗感はなかったということだ。ゴーギャンが描いたタヒチの女もまったくそのとおりだった。ニッポンをふくめて太平洋に浮かぶ島々の文化は本来そういうものだったのだろう。
今でも、銭湯でも温泉でも、赤の他人がいる場所で裸をさらす。そういう文化はまだ死に絶えていない。裸を語ることは文明を語ることだ。裸をけがらわしいと見なす文明もある。上の写真は、女が胸を出すことを罪悪と思わなかった文明が、胸を出すのは罪だ未開だと信じる文明の暴力に、たたきつぶされた瞬間だ。
草��くんは駆けつけた警察官にわめいた。
「裸で何が悪い！」
それは、一種の先祖帰りだったか。