〜我が家の猫物語〜 11月15日

2005年版No.13
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我が家の猫について書いておこう。

ここで登場する猫はすべて「家猫」ではない。つまり家屋の中に入れて飼っているペットではない。エサはやるが家には入れない。だから、毎日あちこちの家の生ゴミ捨て場で欲しいものを探す。ネズミを捕ってきて食べる。積雪期は我が家の農作業小屋で冬ごもりする「外猫」だ。

我が家の猫は、娘が小学校に入学した年にもらった子猫に由来する。生まれて間もないトラ模様のメスで、娘は「チビ」と名付けた。初めは家の中で可愛がった。いっしょに炬燵にもあたった。しかし息子が小児喘息にかかったため、チビは1年ほどして外に出すほかなくなった。チビは家に入りたがった。夜になると窓の外で家人を呼んだ。アルミサッシの玄関を前足で開けて入ってきた。窓によじ登って入ってきた。そのたんびに外に出された。

チビは賢い猫だった。娘が家の裏で名前を叫ぶと、どこからともなく走って帰ってくるのだった。チビの最初の子供が今の「コロ」だ。コロはもう10歳近い。メスのコロは生まれながらの外猫だが、こいつもチビの教えを引き継いで家の戸を開けて入ることが出来る。能力はあるがふだんはそれを使わない。コロをふくめてチビの家系はみなネズミ取りが上手だ。田舎の農家にとってはこれはとても有難いことだった。

チビは一時、姿が見えなくなった。そして2.3年後ふらりと帰ってきて子供を産んだが、その子育てが終わると再びいなくなった。それっきりだった。もう5、6年は経つだろうか、あんな猫は二度とお目にかかれないだろう。そんないい猫だった。

チビの子孫はこれまでいろいろあったが、結局はコロが残った。そのコロが今春生んだ子4匹のうちの1匹が「グレイ」だった。グレイの兄弟姉妹のうち2匹の黒トラはとくに可愛かったためか、初夏のある日誰かに連れ去られていなくなった。残った2匹のうち1匹は生まれながらの障害児だったので秋まで生き残ることは出来なかった。

グレイは灰色のトラ模様でこれも愛らしいメスだった。いつも玄関近くで遊んでいたから、郵便配達のお兄さんや新聞配達のおばさんにも可愛がられていた。

朝晩冷え込むようになった10月下旬のある日、グレイが死んだ。前の晩、子猫の様子がおかしかったが、明くる朝、自宅の脇で死んでいた。毒を食わされたみたいだった。その前の前の日、ワラ置き小屋の二階で野良猫のクロが死んでいた。その時から、いやな予感はしていたのだった。それは的中してしまった。

コロもちょっとおかしかったが、どうにか生き延びてくれそうだ。それだけが救いではある。それにしても ・ ・ ・ ・ 。

「近ごろ見ないですね、どうしたんですか?」事件から1週間くらいたった日、若い郵便配達さんが家内に聞いた。
「 ・ ・ ・ ・ ・ 」
「 ・ ・ ・ ・ ・ 」

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